ウィリアムソンエーテル合成の教科書(基礎から反応条件まで)
ウイリアムソンエーテル合成の基礎(学部生向け)
ウイリアムソンエーテル合成を理解する上で最も大切なのは、攻撃を受ける側(脱離基)である。基本的に脱離基が取れた後でも安定な方が反応しやすい。脱離基について理解する時のイメージとしては、大きい方が取れやすい。ということ。
ウイリアムソンエーテル合成の反応性
○脱離基の反応性
I > Br > Cl > F
まあ普通の求核反応と同じ感じですね。
トシル基でも余裕で反応が進行する。
注意点:SNAr反応の場合は、脱離基が F > Cl > Br > I の順に反応性が低下
○アルキルハライドの種類
1級 > 2級 >> 3級2級のアルキルハライドでは、E2反応を抑制するため、非プロトン性の溶媒(アセトニトリルやDMSO)が溶媒として好ましい。
3級アルキルハライドはE2反応が優先して進行する。
○溶媒の種類
非極性溶媒とプロトン性溶媒は好まれない。非極性溶媒を使わない理由としては、アルコキシド(アルコールと塩基が反応して活性化した状態)の溶解性が低いため。
プロトン性溶媒は、アルコキシドにプロトンを与えて反応性が下がるため。
結局アセトニトリルが第一選択になる。
○アルコール側の種類
あまり立体障害が大きいと反応が遅い。実際の反応で作るときは、本当に反応が進まないことがある。(tーブトキシド等)
○塩基は何にするか
アルキルアルコールを使う場合は、アルコキシドを精製しやすいNaHを使う。ふつうにNaOHでも大丈夫という人もいる。
アリルアルコール(芳香族にOH)の場合は、NaOHやK2CO3を使う文献が多い。噂によると炭酸セシウムを使うと、有機溶媒への溶解性が高いため収率が向上するとか言われてます。
(NaOHやKOHは、他の官能基を壊してしまう可能性があるNa2CO3はどうなんだろうか)
ウイリアムソンエーテル合成の官能基許容性(研究者向け)
実際にウイリアムソンエーテル合成を使うときに一番気になるのは、官能基の許容性です。- エステル基は許容です。(KOH等強塩基は不可。K2CO3はOK)
- エーテル基は許容です。(KOH等強塩基も可。K2CO3はOK)
- ニトロ基は許容です。
- 二重結合や三重結合も許容です。
- アリールハライド(ベンゼン環にハロゲンがついたもの)も許容
- *アリールハライドは、ウイリアムソンエーテル合成の基質にもなりますが、反応性が低いので、アルキルハライドを使ったウイリアムソンエーテル合成は、許容です。
- アミン系:副反応の可能性あり。特に1級アミンは、副反応するかもしれない。
- 有機金属系は不可。そもそも不安定だし。
考え方としては、競争的に反応するものがあるか。塩基に弱いものは有るか。で判断すると良い。
ウイリアムソンエーテル合成手順(研究者向け)
○ウイリアムソンエーテル合成の合成レシピ
アリルアルコール(1eq)とアルキルハライド(1.1eq)、K2CO3 (3eq.)、および適当な量のアセトニトリル(脱水と脱気ナシでOK)をナスフラスコに入れて、80ºCで一晩加熱攪拌する。エバポして、分液(水vs有機溶媒エーテルや酢酸エチル、塩化メチレンでもOK)を行い、硫酸マグネシウムで乾燥して、濾過して、溶媒飛ばして、粗精製物ができる。必要に応じてカラムや再結晶で精製すると良い。
※どうしても精製できない場合、アルキルハライドorトシル化合物が除去できない場合、3アミノ1-プロパノールを反応終了後に入れて一番加熱攪拌しておくと、分液や1cmくらいシリカを積んで濾過すると全部ゴミが除去できる。マジ便利!!まだ論文にはしてないテク。
ウイリアムソンエーテル合成のテクニック(研究者向け)
その1:アルキルハライドがヨウ素( I )以外の時5%くらいのNaIを加えると反応が加速される。フィンケルシュタイン反応 Finkelstein Reactionによりハライドが I になるため。その2:アルコールをトシルクロライドでトシル化すると、ハロゲン化物に代用できる。トシル化→エーテル合成 は定番な流れ(下の図)。
ということでウイリアムソンエーテル合成についての話でした。
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