1H-NMRの解析方法の実践的教科書
1H-NMR(プロトンエヌエムアール)とは
有機化合物とかの “H” の情報を知ることが出来る。正直言ってこれに尽きる。有機化学に携わる研究においては、特殊な場合を除いて、必ず化合物が “H” を持っている。つまり、分子の構造を解析する初めのステップとして、1H-NMRの測定と解析がある。あとは、有機合成で出来上がる分子ってなんとなく見当が付いていますよね。教科書とか授業では、全く構造がわからない分子も解析は出来ます(解析をさせています。ですが、そんな難しいことは、実際はほとんどしません。
化合物AとBを反応させてCを作るみたいな反応を行う時には、出来てくる分子は想像が出来ます。それであれば簡単に解析できます。なので、出来ている分子(または原料)を想像しながら、NMRを解析するようにしてください。
1H-NMRの解析手順
- 1. NMRを測定する
- 2. ピークの数を数える
- 3. ピークの位置(化学シフト:ppm)を文献値と比較する
- 4. ピークの面積(積分比 )を見る
- 5. ピークの割れ方を見る(J値を計算)
1H-NMRの測定
サンプルを重溶媒に溶かしてNMRのマシンに入れるだけ。ポイントは、重溶媒を使うことだけ。
ピークの数を数える
やったー測定できてるー!
ピークの位置(化学シフト:ppm)を文献値と比較する
その時に
“なぜ、特定の官能基が特定の位置(化学シフト)にシグナルが出るのか。”
“どうやれば、化学シフトの位置がわかるのか”
*余談ですが、遮蔽がうんぬんとか電子状態がうんぬんで決まりますが、今の段階では、何も考えず、文献の表と見比べてください*
見比べます。本当に簡単に表と並べてみます。シグナルがCH3由来なのか芳香族由来なのかが分かりました。赤丸がCH3で、緑丸がベンゼン環のシグナルって分かりましたね。
ピークの面積(積分値)を見る
大体官能基の情報を得たら、ピークの面積(積分値と言います)を比較します。ピークの面積は、それぞれの“Hの存在比率”を示しています。理論的には、整数比で現れるはずですが、実際には少しずれます。少しくらいのズレは、忖度します。そして、得られているであろう化合物と積分比からプロトンの個数を整数で出して、整合性を出します。下の図では、積分値から、芳香族の2つのプロトンが重なって同じ(近い)位置に出ていることが分かります。
ピークの割れ方を見る(J値を計算する)
最後にピークの割れ方を見ます。ピークの割れ方は(隣のプロトン数 n + 1 )コに割れます。とにかくそれだけは覚えてください。"なんでn+1コに割れるの?”とか全く考えなくて良いです。構造解析を行う上では、ピークの割れ方は(隣のプロトン数 n + 1 )コに割れることだけ覚えていればOKです。最後にJ値を計算して終了です。理論的には隣同士のHのJ値は同じ値になります(カップリングしていると言います)。が複雑な分子で、ピークが重なっている場合には全く合いません。
J値(単位:Hz) = ピークの割れの幅 × NMRのメガヘルツ数
で算出できます。
ちょっと難易度高すぎたかなこの分子は。。。。
ピークの先っぽが割れてしまうのは、芳香族骨格の共役によって遠くのHとカップリングしているため。例えば、BとD(1H 分)が遠隔のカップリングが起こるため、Bの先っぽが2つに割れている。DはB(2H 分)が遠隔の相互作用があるため先っぽが3つに割れている。
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