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包接化合物*分子内包の世界

2019年9月17日  2021年6月4日 
適切な大きさの空間を持つ分子を作ると、そこに分子やイオンを内包することができる。このように、非共有結合で分子を捉えるという考え方は、超分子科学の基礎を築く研究になった。
初期の例としては、1987年にノーベル賞を受賞したペダーセンらのクラウンエーテルがある。クラウンエーテルは、下図のような環状化合物で、酸素原子の非共有電子対が内側を向いている構造である。そのため、電子不足な金属イオンを捉えることができる。また、捕まえる金属イオンの種類は、クラウンエーテルの内径により選択できる。







Pedersen, C. J. (1967). “Cyclic polyethers and their complexes with metal salts”. J. Am. Chem. Soc. 89: 7017–7036. doi:10.1021/ja01002a035


またクラムらは、カリックスアレーンをベースにしてキャビタントを合成して、有機化合物の内包に成功した。
なぜ内包が起こるのかというと、分子の空間は、真空になることを好みません。溶媒分子が空間よりも大きい場合、分子の空間には入ることができません。その状態に、空間に入る小分子を入れると、小分子は吸い込まれるように、空間の中に入ります。






D. J. Cram, K. D. Stewart, I. Goldberg and K. N. Trueblood:J. Am. Chem. Soc. 107, 2574 (1985). I.Goldberg, Journal of Inclusion Phenomena and Molecular Recognition in Chemistry, 1986, 4, 191, DOI: 10.1007/BF00655934

さらにクラムらは、カルセランド(牢獄)という分子を作り上げました。カルセランドの内部は、外と完全に隔離されています。その内部空間において、通常不安定で存在できない分子の安定化などが可能であることを明らかにしました。外部と遮断することで、不安定分子を安定化する方法は、今でも精力的に研究が進められています。



R.Warmuth, E.F.Maverick, C.B.Knobler, D.J.Cram, Journal of Organic Chemistry, 2003, 68, 2077, DOI: 10.1021/jo026649z
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