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ロタキサン

2019年9月17日  2020年4月16日 
面白い分子の形として、ロタキサンを紹介したい。
ロタキサン (rotaxane)は、リング状分子の中を棒状分子が貫通した形をしている。そして、棒状分子の末端に大きなストッパーが入っているため、リングと棒状分子は、直接結合を持っていないのに、離れることがない。面白いことに、リングは棒状分子の上をスライドすることができる。トポロジーとしては、カテナンと類似している。
ストッパーがない場合は、擬ロタキサン構造と呼ばれる。


1967年に、ハリソンらによって人工のロタキサンが合成された。合成の戦略は、環状分子を樹脂に固定し、そこで偶然に軸分子(デカンジオール)が貫通した瞬間に末端がストッパーと反応したものを得るという手法を採用した。樹脂にリングが固定化されているため、ロタキサンを形成しなかった軸分子は、洗浄により洗い流すことができるので、70回も同様の反応を繰り返して回収した。環状分子の中を軸分子が貫通した状態で反応することは、エントロピー的に不利なので、収率6%程度と極めて低かった。一回の反応では、ほとんどロタキサンが観測出来なかった様子で、何回も繰り返すことで収率向上を狙ったみたいです。70回も反応を行うなんて本当に努力と根性で作り上げた分子だと思いますね。 面白い形を持つカテナンを合成することは、非常に難しいことがわかると思います。

J. Am. Chem. Soc. 1967, 89, 5723-5724. DOI: 10.1021/ja00998a052


カテナンを収率よく合成するためには、発想の転換が必要でした。そこで生まれた合理的にカテナンを合成する手法として、相互作用を上手く使うことが考えられました。具体的には、軸分子とリング分子を事前にくっつけた状態で、末端にストッパーを導入する方法が開発された。本手法は、東北大学の荻野博により初めて実証された。

J. Am. Chem. Soc. 1981, 103, 1303-1304. DOI: 10.1021/ja00395a091


 ストッダートらは、スクエア分子とナフタレンとの相互作用を利用して、高収率なカテナン合成を報告している。この研究は、後のノーベル賞に繋がる成果でもあります。

Eur. J. Org. Chem. 1998 (11): 2565–2571. doi:10.1002/(SICI)1099-0690(199811)1998:11<2565::AID-EJOC2565>3.0.CO;2-8

リンクのモチーフとしては、シクロデキストリンやクラウンエーテルやククルビットリルが利用されることが多い。


Chem. Commun. (5): 493–494. doi:10.1039/b010015n.



これらのカテナンは、軸上でリングがスライドする機能があり、分子機械等へ応用されている。
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