分子のサッカーボール フラーレン【超分子図鑑】
フラーレンは、炭素原子から形成されている球状分子のこと。C60(バックミンスターフラーレン)が代表である。他に高次フラーレン、低次フラーレンがある。形状的な美しさと合成の難しさから非常に魅力的な研究対象です。現在では合成方法(合成というより焼くって感じだけど)と分離方法がかなり確立されてきて、フラーレンを修飾した構造もできてきている。一方で工業的魅力は、現在のところカーボンナノチューブ(CNT)の方が、期待をされている気がする。
バックミンスターフラーレン(C60)
60コの炭素原子からなるフラーレン。初めて発見されたフラーレンである。1985年にライス大学のハロルド・クロトー、ジェームズ・ヒース 、ショーン・オブライエン、ロバート・カール、リチャード・スモーリーによって初めて調製された。名称は、バックミンスターフラーに由来する。私たちの生活でよく見るサッカーボールにとてもよく似ている。 歪んだπ平面を持ち、電気化学的にも興味深い性質を示す。見た目の通り、内部の空間は完全に外部から隔離されている。
高次フラーレン(C70~)
高次フラーレンとは、70コ以上の炭素分子から構成されるフラーレンのことである。C60と比べて、生成量が少ないので、どの高次フラーレンもかなり高額である。
C70フラーレンは、各多角形の頂点に炭素原子があり、25 個の六角形と12 個の五角形で作られたラグビーボールに似た、かご状の縮合環構造です。
分子内包フラーレン
フラーレンは内部に空間を持つため、分子を捉えることができる。京都大学の村田靖次郎 教授らは、分子手術と呼ばれる手法によって、水分子1個を球状の炭素分子フラーレンC60の内部に閉じ込めることを報告しています。下図左が、分子手術によりフラーレンを切り開いた状態。下図右が、水を内包後、穴を閉じた状態。(K.Kurotobi, Y.Murata, Science, 2011, 333, 613, DOI: 10.1126/science.1206376)
フラーレンの部分構造
フラーレンは、多環芳香族パネルをつなぎ合わせて出来ていている。代表的なものとして、コラニュレンがある。スコットらは、コラニュレンをベースとして、カーボンナノチューブの先っぽの構造の合成に成功している。これだけの歪みを持つ化合物を作り出すのはかなりすごい。Clをうまく脱離基としてうまく分子設計がされている。
(L. T. Scott, E. A. Jackson, Q. Zhang, B. D. Steinberg, M. Bancu, B. Li, J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 107.)
コメント
コメントを投稿