酸化反応の教科書:基礎~反応例まで7つのポイント
酸化反応:半反応式や有機反応まで
電子の授受を伴う反応を酸化および還元と呼ぶ。酸化と還元は化学反応の中でも重要な立ち位置にあります。そこで本記事では、酸化反応の基礎(学生向け)と反応例(研究者向け)について書きます。酸化反応を理解する上で、価数の変化を追うという考え方を知り、実際に酸化が反応に使えるということを知っていただければと思います。
酸化反応の基礎:電子の授受に注目する
酸化とは
酸化とは、電子の放出を伴う反応です。酸化反応と還元反応の違いは、対象となる物質が電子を放出するか受け取るかの違いです。
酸化反応と還元反応は、必ず同時に起きています。
分子の目線の違いと言うのが正しいです。
また、酸化と還元を考える時には酸化数に注目することで理解しやすくなります。
酸化数とは
酸化還元反応を述べる時に必ず考えるのが酸化数です。酸化数は、便宜的に下記のルールに従って決まります。- 単体の原子の酸化数は0である。
- 単原子イオンの場合においては、そのイオン価がそのまま酸化数となる。
- 電気的に中性の化合物において、酸化数の総和は0である。
- 水素原子の酸化数は+I
- 酸素原子の酸化数は−II
酸化数は、本質的に電気陰性度によって決まっているので、上記の簡易的な定義では、例外が生じる。具体的には、金属元素の水素化化合物のH原子の酸化数は−I、過酸化物中のO原子の酸化数は−Iである。
酸化反応の見分け方(酸化と還元の見分け方)
酸化反応は、反応する分子の目線で酸化が起きている反応のことです。反応前後で、金属の価数が変わっていたり、Oがついてたりする反応は、酸化反応の可能性があります。試薬として、過マンガン酸カリウムや過酸化水素とか出てくると酸化反応の可能性を考えると良い。ポイントは- 酸化剤は、電子を奪う物質
- 還元剤は、電子を与える物質
過マンガン酸カリウムと過酸化水素の反応(半反応式を考えるべし)
過酸化水素が還元剤として働く例としては、過酸化水素水(H2O2)と過マンガン酸カリウムの反応がある。過酸化水素は一般的には酸化剤である。しかし、過マンガン酸カリウムの方が強い酸化力を持つため、この反応では過酸化水素が電子を与える側になり、還元剤として働く。過マンガン酸カリウムと過酸化水素の反応式を下に示す。有機化合物の酸化反応
有機化合物の反応の基本的な考え
有機化学の授業で頻出する酸化反応ですが、利用価値が高いものが多いです。使う場面は、アルコールの合成、ケトンの合成、アルデヒドの合成、カルボン酸の合成によく使います。これらの酸化は、順番がある。炭化水素を酸化するとアルコール、アルコールを酸化するとケトンorアルデヒド、アルデヒドを酸化するとカルボン酸になります。最も酸化された状態がカルボン酸と考えてください。実際の合成では、酸化剤を適切に選ぶことで、途中段階のアルデヒド等を合成するようにします。過マンガン酸カリウムを使った酸化反応
過マンガン酸カリウムは有機化合物の酸化剤としては最強レベルである。そのため、アルコールは、カルボン酸にまで酸化される。トルエンやアルキルベンゼンは、アルファ位で開裂し、安息香酸が生成する。二重結合は酸化的開裂をして、ケトンまたはカルボン酸を生成する。過マンガン酸カリウム(KMnO4)を使った酸化反応
オゾンを使った酸化反応
オゾン酸化は、1,3-双極子付加反応を起点として二重結合を開裂する反応。酢酸溶媒中亜鉛で還元したり、ジメチルスルフィドで還元することでカルボニル化合物へ誘導する。二重結合にHがついている化合物からはカルボン酸が生じる。有機化学の勉強として、よく出てくるが実験室で使うとなると、オゾンの扱いが面倒なので、優先順位が低い。四酸化オスミウム Osmium Tetroxide (OsO4)を使ったアルケンの酸化
過マンガン酸カリウムやオゾンの酸化では、二重結合が開裂してしまう。そのため二重結合から、ジオールを作ることができない。四酸化オスミウム Osmium Tetroxide (OsO4)は、他の反応では、実現が難しい二重結合からジオールを合成することができる。酸化オスミウムは、毒性が強いため扱いに注意が必要だが、現在はポリマーに酸化オスミウムを担持させたものが売られていて、安全性が向上した。
溶媒としては、水アセトンや水アルコール混合溶媒が利用できる。
酸化オスミウムを用いたアルケンの酸化とジオールの生成
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